2020/4/27
今回のような、未知なウィルスが蔓延し、その影響が長期化する事により以下の4点が心の問題として生じる危険があります。
まず、当然、自分が感染してしまうのではないかと不安や恐怖に暴露されます。
そして、自分だけでなく、自分が他人に感染させてしまうのではないかという不安も当然出ます。
特に、高齢者や基礎疾患がある家族をお持ちの方であればなおさらです。
最近では、症状が出た場合、適切に検査を受けられるだろうか、治療を受けられるかどうかという、検査・治療不安も上がってきています。
このような不安、恐怖に長期暴露されると、攻撃性や猜疑心が生まれてきます。
マスクをしていない人に対して非常に強い陰性感情が生まれ、イライラし、場合によっては、カッとなって文句や苦情を言ったりしてトラブルに発展することもあります。
少しでも咳き込もうものなら、「きっとコロナに違いない」と猜疑的となり、その猜疑心が更なる不安、恐怖を生みます。
その結果、ずっと交感神経が高まってしまい、不安疲れに陥ります。
ここで問題なのが、不安で疲れているにもかかわらず、覚醒成分の交感神経が高まっているため、その疲れに気づかずに、脳疲労から生じるうつ状態を引き起こすリスクが高まります。
また、交感神経過剰反応で、感覚が敏感になり過ぎて、ひどい場合には、被害、迫害妄想に発展する危険すらあります。
これも、長期化がもたらす弊害です。
最初は、テレワークが始まると、「通勤がなくなって楽になる」、学校がWeb授業になることで「家で受けられるなんてラッキー」とどちらかといえば嬉しい反応を起こします。
しかし、その状況が慢性化すると、家での物理的環境や家族との心理的距離があまりにも近くなりすぎる事によって、自分の居場所や時間が無くなったと感じ、息苦しくなりストレスとなっていきます。
ある意味慣れない環境に長期化暴露されることにより、ボディーブローのようなストレスを感じます。
ここで問題になるのが、相手への配慮です。
自分が苦しまない程度の配慮ならよいのですが、自己犠牲をしてまでする配慮であれば、それは、負の連鎖につながります。
テレワークをしている夫に気を使い過ぎて、音を立てずに生活する、子供に対しても、いつも以上に静かにするように強要してしまう。
その結果、親子関係の悪化を引き起こします。
そして、そのストレスを夫に向けてしまい、夫婦関係も悪化します。
そのことで、また、子供にあたってしまい、さらに関係悪化となります。負の連鎖です。
最近では、コロナDVなる言葉も出てきているほど、家族関係に負の影響を及ぼします。
テレビでは、いろいろな「有識者」によって、様々な見方から発せられる情報が垂れ流されています。
有識者には、きちんと根拠があることに基づいて発言している人もいれば、単に想像に過ぎないことをあたかも確実に起こることのように発言している人もいます。
有識者として、TVに出演している医師などいますが、我々医師側からすれば、「ただの医師」であり、感染症専門でない医師がいけしゃあしゃあと発言している場面をよく目にします。
そして、悲観的な発言もあれば、楽観的な発言など・・・・。カオスです。
有識者といえども、未知なるウィルスに対する見解なので、すべからく正しいものではなく、あくまでも、一つの見方ととらえないと、まさに心がカオス状態になります。
ネットの方がまだ、マシなこともありますが、ネット上の情報が元になり偏見や、買い占めなどの問題もすでに起こってきています。
本来なら、危機を助け、適切な行動を起こさせるための情報が、人の心をむしばむ危険なツールとなってしまいます。
あくまでも、「ある一つの見方」程度と考える事です。
極論でいえば、「相手の都合」、「その人の頭にあるファンタジー」とすら思っても良いと思います。
これは、飲食業やイベント関連の会社ではすでに重大な問題となっています。
ただ、いわゆるサラリーマンの方は、会社は存在しており、給料もいつもと変わらない為、最初のうちはそんなに心配な事と感じないと思います。
しかし、この状況が長期化すると、相当なストレスになって襲い掛かってきます。
「マズローの欲求5段階」という言葉をご存知でしょうか?
「生理的欲求」から始まり、「安全の欲求」、「所属と愛の欲求」、「承認欲求」、「自己実現の欲求」と上がっていきます。
この経済的ストレスは、「安全の欲求」にあたります。
コロナウィルス曝されることで生じる「健康という安全欲求」を脅かされるだけではなく、「経済的安全欲求」まで脅かされます。
さらに、会社が倒産の危機になるものなら、さらに上の「所属と愛の欲求」までもが脅かされ、非常に強いストレスとなります。
さらに、その強いストレスに暴露された結果、うつ状態に陥ってしまう危険が出てきます。
ここで厄介なのが、うつ状態からうつ病へ至ってしまうと、「貧困妄想」という症状にまで発展してしまいます。
これは、自分が将来貧困にあえぎ苦しんでしまうのではないかという観念に四六時中支配され、最悪、自分自身、家族の将来を悲観し、自殺に至ることもある非常に危険な症状です。
この貧困妄想はうつ病の症状ですが、治療で改善します。
このレベルまでなってしまっては治療が必衰です。
※本掲載内容を許可なく転載することを禁じます