2020/5/21
では、先ほどのマズローの欲求5段階がどのように、テレワーク不眠、不安に影響しているかを考えていきます。
GW前は、新型コロナが直接もたらすストレス、例えば、感染のリスク、毎日流れる感染者数や、死亡者数。海外での悲惨な状況などです。
つまり、マズローの「安全の欲求」の危機に対して不安になっている状態です。
そして、この「安全の欲求」にはいくつか段階があり、最も基礎になっているのが「生存欲求」です。
つまり、生きながらえることの安全です。
GW前は、マスクを買い求めたり、極力人と接しない、stay homeなど、ウィルス感染せずに生きながらえることに必死でした。
よって、そのことに対し、葛藤し、過覚醒を起こし、不安、不眠状態になってしまう傾向がありました。
皆さんも思い当たるのではないでしょうか?
見えない新型コロナウィルスに対して、不安が強くなり、電車で咳をしている人を見たら、怖くなったりした経験ないでしょうか?
GWを挟んで、皆さんのstay homeの頑張りもあり、ある程度新規感染者数が減り、また、治療薬もやっと承認されたことで、ある程度この「生存欲求」が満たされてきました。
世界を見ても、規制が緩和され、withコロナにシフトしていっています。
結果として、GW後は、その上位の欲求、つまり、「安全の欲求」の中の、「より安心して暮らす欲求=経済的安心」と、そして、さらに上位の「社会的欲求」に対して葛藤し、不眠、不安に陥ってしまったと考えられます。
GW前 | GW後 | |
---|---|---|
安全の欲求 | 生存欲求>安心欲求 | 生存欲求<安心欲求 |
社会的欲求 | 低 | 高 |
GW明けに、経済がある程度回ってくると考えられていましたが、実際はまだまだ経済は回る気配がありません。
某大手服飾メーカーが民事再生法を適応するなどショッキングなことも起こってきています。
巷では、飲食業、接客業、中小企業、旅行関係の会社が倒産の危機にあるなどの報道もあります。
このような状況に暴露されると、当然、経済的安定という「安全の欲求」が満たされなくなります。
まずは、GW明けに、この経済的安定の危機に対して過覚醒を生じ、不眠、不安になってしま可能性があります。
そして、このGW明けの特徴として最も大きいのが、その次の段階です。
つまり、「社会的欲求」の欠如が大きいと思います。
GWでおよそテレワークが解除されると思っていたが、長引いたため、「どこかに所属したい(集団への帰属)」と考える「社会的欲求」が欠如し始めたのです。
新型コロナウィルス脅威がある前、そこに(会社に)所属していることで、社会的欲求が満たされている時は、「職場に行くのがめんどくさいなぁ」、「何で仕事しなきゃいけないんだ」と葛藤しますが、いざ、その欲求が失われる状況になると、実はその葛藤は、社会的欲求が満たされている上での葛藤し得ることだと、初めて気づくこともあります。
患者さんも最近、「会社に行きたい」、「たまにはみんなと話し合いたい」、「直接会わないと寂しい」、「自分がこんなに会社に行きたくなるなど考えもしなかった」など訴える人が増えてきました。
これは、GW前のテレワーク初期にはあまり聞かれなかった訴えです。
つまり、それぞれ下位層の欲求が満たされると、次にその上の欲求に葛藤する結果生じている傾向だと思います。
実際、新型コロナウィルス危機以前は、「仕事のやりがい」、「上司、会社に認められていない」、「上司がわかってくれない」など、「社会的欲求」より上の、「承認欲求」に葛藤し不眠、不安になる人が多かった傾向にあります。
では、この社会的欲求が満たされない危機に対して、人は不安、不眠だけでなく、さらに厄介な状況に陥ってしまう事があります。
それは、うつです。
次のコラムで、この「テレワーク不眠・不安からテレワークうつへの移行について説明します。
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