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食べないと眠れない症候群

日常、摂食障害を治療していると、「夜食べないと眠れない」、「どうしても、寝る前に食欲が止まらない」、「睡眠障害で、途中で起きると食べずにいられない」とうい患者さんがいます。

「食べないと眠れない症候群」と書きましたが、正式には、「夜間摂食症候群(nocturnal eating syndrome:NES)」といいます。

夜間摂食症候群とは?

これは、寝る前や、途中で起きてしまった時に、どうしても食べる事を止められずに無茶食いをしてしまう事です。

そして、無茶食いの結果、朝の食欲がなくて、最悪、二次障害として、うつ症状を呈することもあります。

一般的には、このような食事のコントロール不能は、摂食障害でみられ、摂食障害は女性に多い障害ですが、このNESは、女性ももちろんいますが、男性に多いという特徴があります。

ホルモンによる不眠と摂食の悪循環

原因の一つとして、レプチン、グレリン、インスリン、メラトニンなどのホルモンの関与が指摘されています。

レプチンは食欲を抑制し、グレリンは食欲を促進させる作用があります。

NESの患者さんでは、本来夜間に上昇するレプチンが抑制されてしまい、抑制がきかなくなります。

そして、グレリンは、朝食前空腹時にピークをむかえるのですが、夜の無茶食いのせいで抑制され食欲が出てこなくなってしまいます。

また、NESでは夜間のインスリン分泌量が上昇するため空腹感を感じやすくなります。

そして、本来夜に上昇し眠気に関与するメラトニン分泌量が低下し、不眠を引き起こします。

このような、不眠と摂食の悪循環がNESの原因の一つです。

ストレスとの関係

しかし、NESを治療していて感じるのが、ストレスとの関係です。

仕事のストレスが過度になったり、夜遅くまで仕事をしなくてはならなくなると、やはり、そのストレスを受けたまま一日を終わらせたくはなくなります。

努力報酬バランス

努力報酬バランスという概念があります。

ここでの努力とは、頑張る事だけではない、ストレスを受ける事も努力に含まれます。

ここでの報酬とは、努力に対する対価や、ねぎらい、達成感、上司の支援などです。

一日の中で、この努力が報酬を大きく上回ってしまうと、一日の最後にそのバランスの均衡をとりたくなります。つまり、癒されたくなります。

短絡的な癒しである「食事」

夜家に帰り、時間がない中で、一番短絡的に出来る癒しは食べる事です。

また、日中のストレスはコントロール出来ない事なので、そのコントロール出来ない状況に暴露され続けると、どうしてもコントロール出来ることをしたくなります。

食べる事は、人間本来の欲求なため、「食べる事」はコントロールしやすいですが、「食べない事」はコントロールしにくいものです。

このような、精神病理もNESに影響しています。

セロトニンとの関係

そして、NESが長引く要因として、セロトニンが関与していると当医は考えます。

ストレスを受け続けるとセロトニンの機能障害を生じます。

このセロトニンの機能障害の結果、うつ状態や強迫思考(拘り)を引き起こすこともあります。

「眠るために食べる」が、いつしか「食べないと眠れない」に

ストレスで眠れない状態では、覚醒の交感神経が高まっているので、食べる事により逆の副交感神経が亢進して眠くなります。

何度か、この「眠るために食べる」ことを行うと、今度は、「食べないと眠れない」という考えに移行してしまいます。

ましては、セロトニンの機能障害で、強迫性・拘りが強くなっている状態では、より一層「食べないと眠れない」という考えが頭から離れなくなります。

NESの治療について

では、このような状態になった場合、どのようにすればよいかといえば、まずは、自分が普通の状態ではなく、「NES」であることを理解する事です。

夜型の生活リズムを改善して、朝しっかり太陽を浴びる。ストレスを可能な限り減らせるよう上司に相談する。

食べること以外の癒しを取り入れたり、自分だけでコントロールできる余暇を楽しむなどの工夫も大切です。

また、セロトニンの機能障害には薬物療法もあり、特に眠れない不安・拘りには有効です。

ひょっとして、自分がこの「NES」かな?とお悩みになったら、一度ご相談下さい。

一緒に良きソリューション(解決策)を見つけていきましょう。

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